『めりーくりすまーす!』
雪に見立てた綿やさまざまな飾りを乗せたクリスマスツリー(余談ながらはそれをじっくりと眺めて「アジアンツリーもかっこいいなあ」などとよく解らないことを呟いていたそうである)、鮮やかな色紙で彩られた会場、七面鳥を模した鶏肉の唐揚げに南蛮のボーロ。
今日この日のための歌には、こういった一節がある。諸人挙りて迎えまつれ。久しく待ちにし主は来ませり。
聖クリスマスである。
「なんとか一段落つきましたね」
「ええ…私初めてですよこんな激動のクリスマス」
「あとは例のあれを残すだけだな、準備はいいか」
「抜かりなく。プレゼントは全部袋にまとめて一つ所に、それから赤い着物も作ってあります」
「でもほとんど手探りなのにちゃんと形になってるからすごいですよ…さんがんばってくれましたものね」
「松千代先生、そういうことを言うんならまず私の後ろから出なさい」
「ありがとうございます! でもわりと大雑把なお祭りなんで、多少外しても構わないのが大きいところですよ」
「あの…ところでこの鳥居をかぶった男の形した焼き菓子、いったい何の呪いなんですか」
「土井先生に当たりましたか。は組の子達が駄洒落ノリで作った神社マンクッキーだそうです。ショウガが入ってます」
「……あいつらか…」
教師溜まりの中からふと視線を投じると、何だかんだと言いつつどの学年も楽しんでいるようだ。さすがに三禁に抵触するため生徒に酒は出ないが、それを抜いても会場のきらきらと賑やかな空気は十分に人を酔わせ、饒舌にする。
この日は神の生まれた日。
普段の関係はどうあれ誰もが自分の隣人に感謝し、互いに慈しみあい微笑みあって、今一度敬虔な気持ちになれる日、
「貴っ様…やかましいにも程があるぞ! いい加減に黙りやがれヘマ亀三郎!」
「なんだと! 元はと言えばお前のせいだこの萎れギン次郎っ!」
「おおい、盛大な祭りやっとると聞いて混ざりに来たぞ! ついでに勝負しろ野村雄三!」
「準備にも加わらなかった奴が図々しいことを抜かすな! この宴会に至るまでの経緯知ってるのか雅之助!」
「戸部新左エ門ー! 今日はちゃんと入門表書いたしドブの泥もついてないぞ! 勝負しよー!」
「ああうるさいっ! 今飯を食ってるんだから大人しくしろ、それから勝負はしない!」
「なんていうか…これが忍術学園の常ですよね。うん」
「…花房牧之介入れたの誰だ…」
「そこら辺の紙に勝手に名前書いて入って来たみたいですけど、叩き出しましょうか」
「…いや、今日ぐらいはいいんじゃないですか? いつも通りのやり取りをいつも通りの人達と、まるごと全部引っくるめて楽しむ日ってことで」
「ものは言いようじゃの」
「グダグダな状況をそれっぽい言い方で綺麗に纏めるのは私の特技です」
「あれ? そんなさわやかにドス黒い人でしたっけさんって…」
「何よりの褒め言葉をどうも」
「どこ行こうかな」
もちろん宴会の直中に乱入する
人が多くて暑くなってきた、外に出よう
そろそろサンタドッキリの支度をしないと